出品しようと思ってお店のホームページを探していたら、なんと三年前(2020年)に閉店されていました。あぁ、京都の老舗でさえ、こうして一つ一つ失われてゆくのは残念な限りです。198年つづいたという京都祇園の老舗柘植(つげ)櫛屋さん「二十三や」さんのお話です。閉店よりさらに遡るある日、お店でうかがったのは「繊細な仕事のできる職人さんがもうおられなくなって」「日本の柘植は数が少なくて一部の高価な物にしか使えなくなってしまいました」と。今思うと、それが閉店の予兆だったのかもしれません。ちなみに、柘植櫛の刻印で「本つげ」とある方が実はタイから輸入されたシャムツゲで、アカネ科クチナシ属。本来の柘植はツゲ科ツゲ属で、日本にだけ生息する植物なので、両者は全くの別物なのだそうです。日本の柘植は「本つげ」ではなく「さつま柘植(つげ)」と呼び分けられているのだとか。「本つげ」が、本当は柘植じゃあなかっただなんてねぇ…、びっくりです。さて、こちらの櫛は「︿に半」の焼き印で明らかなように、二十三やさんの柘植のとき櫛です。老舗の柘植櫛屋さんに憧れて、四半世紀以上前にお店を訪ねて購入しました。その時に教えて頂いた通り、椿油に数週間浸けて拭きあげてからしまっておきました。ぽってりと厚みがあって艶やかなのは、この時のお手入れのおかげかと思います。新しいお品にはない明るい鼈甲いろに育ち、写真のように水滴もはじきます。購入時に国産のさつま柘植(つげ）であることを確かめ、粗削りと細削りの二種類のうちの細削りの方を選びました。長さ約11cmで、手の内にちょうど収まる大きさ。布袋に納めて携帯できます。もはや絶品のヴィンテージ櫛、飴色の艶を楽しんで下さいませ。十三や かづら清 二十三や つげ櫛 櫛 くしアンティーク ヴィンテージ京都 老舗 祇園